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『バスジャックプレイヤー』上演のお知らせ [その他]

拙作『バスジャックプレイヤー』を上演します。

日 時 1月6日(日)開演15時 上演時間 約30分 場 所 南部青少年センターホール(千葉市)

千葉市内の高校演劇部が運営する「小芝居祭」の最後に演劇部の顧問が演じます。

「小芝居祭」のスケジュールも載せておきます。お近くの方は観にいらしてください。大会とはひと味違う高校演劇部の魅力を感じていただけるはずです。

第3回小芝居祭

1月5日(土)
13:00~13:30 犢橋高校
13:30~14:00 市立千葉高校
14:00~14:30 千葉東高校
14:30~15:00 千葉経済大付属高校
15:00~15:30 県立千葉高校
15:30~16:00 土気高校

1月6日(日)
13:00~13:30 市立稲毛高校
13:30~14:00 千葉北高校
14:00~14:30 磯辺高校
14:30~15:00 幕張総合高校
15:00~15:30 山田組による『バスジャックプレイヤー』

実はこの作品、この公演のために書き下ろしたのですが、「はりこのトラの穴」に上げておいたので、すでに2団体が上演してくれています。今回はオリジナル。先の2団体に負けないように頑張ります。
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小説書いてます。 [その他]

今年ももう終わりですねえ。なんかとても早いです。

定年退職して分かったのですが、仕事って人生の時間の流れに渡された命綱みたいなもんだったんですね。あるとそれに束縛されることもあって不自由だけど、いざなくなってしまうとひたすら時間の中を流されるだけです。どっかに手がかり足がかりを見つけないと暗渠に吸いこまれそうで不安です。

ということもあって7月から小説を書き始めました。もともと作家志望だったのですが、仕事があるうちにはなんとなくそれを口実にして怠けていました。でも、人生も残りわずかです。今のうちに悔いのないように夢に挑戦しようというわけです。

7月に書いた『千年天女』は千葉市創作ミュージカル原作大賞に応募しました。ありがたいことにこの作品は大賞をいただくことができました。

8月に書いた作品は野性時代フロンティア文学賞に応募しました。時代小説です。

9月に書いた作品は横溝正史ミステリー&ホラー大賞に応募しました。ホラーです。

10月から11月にかけて書いた作品は角川小説大賞に応募しました。これはミステリーです。

どれも執筆にかけた時間は1ヶ月ですけど、構想はずっと前から温めていました。やっと最後まで書き終えてほっとしています。

今思うとずっと書くことができなかったのは、書き終える勇気がなかったからです。いいものが書けるはずだという思い込みやプライドに縛られてしまい、それらを克服することが出来なかったのです。

芝居の恩師である西田了先生は、私の脚本の上演をご覧になった後で「すべて傑作というわけにはいかないよ」と言ってくださいました。これは「傑作を書かなければ。自分なら書けるはずだ」というプレッシャーに負けず、とにかくどんどん書きなさいという先生の励ましの言葉だったのだと思います。

脚本はすでに書いてあったものを2作応募しました。そのうち1作は一次選考ではじかれました。

やっと腹をくくって書くことができるようになりました。まだまだ書きたいことがたくさんあります。来年も落選しても落選しても書き続けるつもりです。

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森鴎外先生の墓参りです。 [その他]

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三鷹の禅林寺に森鴎外先生のお墓参りに行ってきました。昨年は津和野のお墓に詣でましたので、どちらのお墓もお参りすることが出来ました。

禅林寺は三鷹駅南口から徒歩で15分ほどのとこにあります。まずは南口前の広場を真っ直ぐに進んでエスカレーターを降ります。道の左右に様々な商店が並ぶ道を真っ直ぐに行きます。お急ぎでなければ、途中に山本有三の碑があったり、洒落た喫茶店などもあります。

↓ 山本有三の碑

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↑ 台座には「この世に生きているものは、何らかの意味において、太陽に向かって手を伸ばしていないものはないと思います。有三」と刻まれています。いい言葉ですね。

それから供花をお求めの際は道の右手歩道を歩くことをお薦めします。私は左側を通ったためにお供えの花を売る店を二軒も見逃していました。

しばらく歩くと左手にNTTが見えます。それを過ぎて少し進むと連雀と道が交差しますので、渡らずに右折してください。郵便局の先、道の右側に禅林寺があります。

↓ 山門が広い駐車場の奥にありますので、お見逃しなく。

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山門をくぐると、木々に囲まれた下に鴎外先生の遺書を刻んだ石碑があります。↓

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この遺書は親友の賀古鶴所に宛てたもので、石見の人森林太郎として死にたいので、墓石には軍医総監や作家としての肩書きを刻まないでほしいという内容です。ちなみに賀古鶴所は処女作『舞姫』に登場する主人公の親友相澤謙吉のモデルだそうです。

さらに奥に進むと、次のような案内板があります。

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トンネルをくぐり右側に出て、桶と柄杓置き場
のすぐ先を左に進んだところにお墓はあります。

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花が枯れてしまっています。花を買わなかったことが悔やまれます。

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↑ 前にある太宰治先生のお墓にはこんなに花が。平日でもお参りの人が絶えないそうです。

でも、

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この日はこんなに素敵な秋晴れ。自然が鴎外先生のお墓を見守っていました。

「いい作品が書けますように」とお願いしました。昨年は津和野のお墓にも詣でているので、「可愛い奴」と思って願いを叶えてくださるかも、などと勝手なことを思いながらお寺をあとにします。

付録

駅に戻る途中、連雀通りから駅前通りに出てすぐのところに「まつや」という店構えの洒落たお蕎麦屋があったので、天せいろを食べました。

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これで千円です。お得ですよね。

お花を供えられなくて残念です。また来るとしましょう。


↓ せっかくだから鴎外先生の作品を一気に読んでみませんか。意味が分からなくても言葉の響きに魅了されるはずです。


『森鴎外全集・136作品⇒1冊』

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  • 出版社/メーカー: 森鴎外全集・出版委員会
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: Kindle版



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千葉市民創作ミュージカル原作大賞受賞!! [その他]

拙作『千年天女』千葉市民創作ミュージカル原作大賞に選ばれました。

大賞に選ばれただけでも感激ですが、演出の小笠原響先生がミュージカルに仕上げてくださるそうです。どんな役者の皆さんが集まって、どんな作品になるか今から楽しみです。

上演は2020年の予定。待ち遠しいなあ。

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不思議な果物 [その他]

フェイジョアという果物を初めて食べた。不思議な味だ。半分に切ってスプーンでほじって食べるらしいけど、面倒なので固い皮を剥いて食べてみた。味はブドウに似てるけど、独特。
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弥生小劇団さんの公演詳細です。 [その他]

日本工学院の
「弥生小劇団」さんが「日本工学院かまた祭」にて
拙作
「穴~キツネとネズミの物語」朗読版を上演してくださいます。

27(土) 15:00開場15:15~16:15公演
28(日) 11:45開場12:00~13:00公演
日本工学院6号館
二階:第一ヴォイスルームにて

↓ 稽古写真を送ってくださいました。

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公演のお知らせです。 [その他]

日本工学院の「弥生小劇団」さん
が、拙作「朗読版 穴」を上演してくれるそうです。

日本工学院かまた祭10月27日及び10月28日の2日間での上演だそうです。

詳しい時間はまだ未定です。
どんなキツネとネズミになるかとても楽しみです。
お近くの方はぜひ御覧ください。
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第1回四街道市民オペラ 「杉原千畝物語」を観てきました [観劇]

9月1日(土)に

第1回四街道市民オペラ
「杉原千畝物語」

を観て来ました。


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9月1日(土)15時からの回を観ました。1000人弱入るホールが満席でした。

杉原千畝役の内山伸吾さん、千畝の妻幸子役の大隈智佳子さんはとにかく素敵でした。プロのソリストの歌声に圧倒されました。

鴻巣バレエスタジオの皆さんのバレエはまるで美しい花のようでした。特に千畝と幸子が戦後40年後にイスラエル政府から「ヤド・バシュム賞」を授与されるシーンで二人の周囲を桜の精のように舞うシーンは素晴らしかった。6000人のユダヤ人を救ったにもかかわらず、日本政府から不当な扱いを受け不遇な年月を送っていた千畝と幸子がやっと正当な評価を受けたことを讃えるようでした。

市民の皆さんの心のこもった演技や歌にも感動しました。
オペラを市民が演じるというのはとても難しいことだと思います。半年の練習でここまでの作品に仕上げるには、皆さんの並々ならぬ情熱と努力があったことでしょう。

内容がよかったのは言うまでもありませんが、私なりに一言。
とにかく、人が何と言おうと自分が正しいと信じたことをする千畝の生き様に感銘を受けました。ユダヤ人にビザを発行すればドイツからどんな制裁を受けるか分からない。まさに命懸けの行為だったはずです。
頼みの日本政府はビザの発行はならぬと命じるばかりでした。千畝はその命令に背いてまでユダヤ人を救おうとしました。領事館を退去してホテルに移っても、腕がしびれ万年筆が折れても一日300枚のビザを書き続けたそうです。過酷な全体主義の時代に、こんな勇敢な日本人がいたことは同じ日本人として誇らしいことです。
それにしても、戦後の外務省が命令に背いたことで千畝を免官にしたのには驚きました。しかも、日本政府が正式に千畝とその家族に謝罪したのは2000年だそうです。こんな偉大な行いをした人のことを誰も認められなかったというのは、日本人としてとても恥ずかしいことでもあります。立場の違いや国と国との関係に関わらず、人の命を救うために尽くした人はどんな国、どんな時代でも讃えられるべきです。

これからは四街道市民のミュージカルとオペラを交互に上演するようです。今後も平和を愛する四街道市にふさわしい作品を観せてくれることでしょう。楽しみですね。

↓ 奥様の幸子さんが書いた千畝の話です。


杉原千畝物語―命のビザをありがとう (フォア文庫)

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  • 作者: 杉原 幸子
  • 出版社/メーカー: 金の星社
  • 発売日: 2003/06/01
  • メディア: 新書



↓ 活字が苦手な方には漫画の伝記もありますよ。


杉原千畝 (コミック版世界の伝記)

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  • 作者: 山田 せいこ
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: 単行本



↓ ドラマ化もされています。


杉原千畝 スギハラチウネ Blu-ray通常版

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray


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童話『穴~キツネとネズミの物語』 [短編]

『穴~キツネとネズミの物語』  高平 九

はしがき
 脚本として書いたものを童話にしてみました。ひとつの寓話として読んでください。

あらすじ
 洞窟の中の穴をはさんでキツネとネズミが出会います。どちらも飢えています。キツネは獲物を得るためにネズミにある提案をするのですが……。

本文
 そのネズミは洞窟の中に住んでいました。
 ある日ネズミは、洞窟の奥にやっと通れるほどの小さな穴を見つけました。洞窟の中は仲間が増えすぎてエサが足りません。虫もコケも食べ尽くしてしまいました。ネズミは穴を通って新世界に行こうと中を覗きました。
 キツネは洞窟の中に住んでいました。
 キツネは洞窟の奥に鼻先がやっと入るぐらいの小さな穴を見つけました。洞窟の中にたくさんいたネズミは彼の家族が全部平らげてしまいました。穴の向こうからはネズミの鳴き声があんなに聞こえています。キツネはたまらず鼻を突っ込んで匂いを嗅ぎました。
「ああ、美味しそうな匂いだ。くんくん」
「うわーっ」ネズミが驚いて叫んだ。
「わーっ」その声にキツネが驚いた。
「……なんだネズミ君か、脅かすなよ」とキツネ。
「お、お前はキツネだな。……僕のお兄ちゃんをさんざん弄んで食べもしなかったキツネだな」とネズミ。
「いやいや、僕はそんなことはしないぞ。ネズミを捕まえたらきちんと残さずいただくよ。それは大方、あの礼儀知らずのネコの仕業だろう。奴らは人間に飼い慣らされて十分にエサをもらっているから、ネズミ君たちを食べる必要がないのさ。ただ、殺すために殺してる。ひどい奴らだ」
「……でも、あなたも僕らを食べるんでしょう」ネズミがおそるおそる尋ねると、
「そりゃ、な」
「ひぇー」と叫んで逃げようとするネズミを、
「ちょっと待てよ。こんな小さな穴は通れないよ。君がこちらにやって来ない限りは安全だよ」とキツネが引き止めました。
「……ほんとに」
「ホラ……鼻がやっとさ」暗い穴の向こう側に大きなキツネの鼻がありました。
「……すっごい鼻だね」
「ははは。キツネをこんなに近くで見られるネズミなんてめったにいやしない。見物(けんぶつ)だろ」
「そ、そうだね。……うわーっ、ずいぶんつり上がった目をしてる。それに、その口……やっぱり、さようなら」
「おい、待てったら。まったく臆病なネズミだなあ。僕もネズミと話すなんてめったにないんだ。今だって腹ペコで……あっ、いや……」
「ぼ、僕を食べたいの?」ネズミは恐ろしさに耐えて尋ねました。
「そりゃあ……な」
「僕だって、はらぺこさ」
「君たちはいったい何を食べるんだい?」
「そりゃあ虫とか苔とか……」
「えっ?虫だって……。虫ならこっちにわんさかいるよ。よくこんな気持ち悪いもの食えるね」キツネの廻りには汚らしい虫たちが飛び回っていました。キツネは身体のあちこちにまとわりつくそいつらが大嫌いでした。
「虫は旨(うま)いよ。特にあの羽虫(はむし)の旨さときたら……」
 キツネの耳にネズミの唾を飲む音が聞こえました。そのときキツネはとてもいいことを思いつきました。
「なあ、ネズミくん。なんならそっちに虫を追い込んでやろうか。ぶんぶんうるさい羽虫もたっぷりとさ」
「そりゃあ、そうしてくれたら……ごっくん……うれしいけど……」
「なら、ほれ」キツネが穴から虫たちを追い込んだので、反対側の穴からたくさんの虫があふれ出てきました。
「うわーっ、こりゃすごい……モグモグモグ」
「どうだい旨いかい?」ネズミは食べることに夢中でキツネの恐ろしさも忘れていました。
「ところで、ネズミくん……食事中悪いけどさ。少し僕の話を聞いておくれよ」
「なんだい……話って……ゲップ」
「なんなら、これから毎日、そっちに虫を送ってやってもいいんだよ」
「えっ、本当……ゲップ」
「本当だとも。その代わり……」
「……えっ?」
「その虫を君が独り占めするのはどうだろう。仲間たちにも少しばかり分けてやってもいいんじゃないかい」
「いいのかい?仲間を呼んでも……ゲップ」ネズミは喜びました。仲間のネズミたちはみんな飢えていたからです。
「いいさ。ただ、君の仲間ってすごい数いるんだよね」
「ああ、どんどん増えるからね……ゲップ」
「それじゃあ、こっちにいくら虫がいてもあっという間にたいらげてしまうんじゃない?」
「大丈夫だよ。今日は久しぶりだったから僕も食べ過ぎるぐらい食べてしまったけど、次からは少し我慢してみんなで分け合えばいいんだ」
「そうかな」
「えっ?」
「みんなで食べたら、いつか尽きてしまうって分かり切ってるんだよ。それだったら、今のうちに食べようって、みんなお腹いっぱい食べるんじゃないかな」
「そんなに馬鹿じゃないよ」ネズミはちょっと不快でした。力は及ばないものの、知恵ではキツネに負けないと思っていたからです。
「そうだね。取り越し苦労かもしれないね。でも、そんなに利口ならなんで今、そっちに虫がいないんだろう。少し加減して食べていたら、虫はいなくならなかったのかもしれない」
「そ、それは……」
「やはりネズミの数が多すぎるんじゃないかな。なんなら減らす手伝いをしてやってもいいんだけど……」
「えっ?……それって」
「そうさ。僕たちが手を組めば、穴のそっちもこっちも幸せになれるんだ」
「それは……できないよ」
「おいおい、さんざん食っておいてそれかよ。難しいことじゃないんだぜ。虫がいるぞって言って、君の嫌いな奴を何匹かこの穴に誘い込めばいいんだよ。あとは僕の方でやるからさ。いるだろ、死ねばいいって思ってるネズミの一匹や二匹」
「そんなの……いない」
「嘘つきだな。君は」
「ちがう」
「じゃあ、恩知らずかい」
「それも……ちがう」
「なら、あとは誰かを呼んでくるだけだろ。どうせ、放っておいたら飢えて死んじまうんだ。少しぐらい危険でも腹いっぱい食いたい奴がいる。必ずな。そういう奴に声をかけりゃいいのさ。簡単だろ」
「それだけ。僕の仲間も僕と同じようにたらふく虫を食べられるの?」
「そうさ。そいつらが穴のこっちまで来れば虫は食い放題だ。そうしたら、さっきみたいに君には虫を送り込んでやるよ。誰も損をしない、楽な取り引きさ」
「……わかった」そう答えたネズミは穴のそばを離れました。もちろん仲間に声をかける気はありませんでした。ところが、家族の元に帰る途中で日頃身体の小さな彼を面白半分に噛んだりひっかいたりする乱暴者たちに出くわしてしまいました。
「あれっ? おい、こいつ鼻先に虫の羽をつけてるぜ」
「兄貴、そりゃあ兄貴の好物の羽虫じゃねえですか。おい、こいつどこで虫を見つけやがった。ガブッ」悪いネズミが腕を嚙んできました。
「虫なんて知らないよ。大方どっかで羽が付いたんだ」ネズミは痛みを堪えて言いました。
「クンクン。おい、嘘はいけねなあ。お前の口から虫のいい匂いが漂ってるぜ。腹だってそんなにふくれて……」
「ゲップ……あっ」
「こいつゲップだってよ」
「ここ何日もろくに食ってない俺らの前で。この野郎。どこだ、一体どこでたらふく食ってきやがった。言わねえと、お前の腹を引き裂いて虫をいただくぜ」
 ネズミは仕方なく、さっきの穴のところへと二匹を案内しました。
「そこだよ。そこの穴の向こうにたくさん虫がいる」
「嘘じゃねえだろうな」
「兄貴、この穴の周りにたくさん羽虫の羽が落ちてやすぜ」
「よし、そんならまずお前が入れ」
 兄貴分のネズミが言いました。
「えっ?僕?」
「そうだ。さっき入ったんだろう?」
「……うん」
「なら、もういっぺん入ってみせろ」
「兄貴、穴の向こうから旨そうな羽音がしてますぜ。そんな奴放っておいて早く行きましょう」
「まあ待て。さあ、お前が先だ」
 ネズミは仕方なく穴に入りました。二匹のネズミは少し間を取ってついてきます。穴を抜けると、さっきのキツネが壁にピタリと身体を寄せて待ち伏せしていました。耳まで裂けた口には白く鋭い牙がずらり並んでいます。キツネの目は糸のように細められていました。笑っているのです。ネズミはいきなり前方に走りました。二匹のネズミもつられるように走って虫の中に突進しました。二匹が虫に夢中になっているのを横目で見て、ネズミはきびすを返し穴に逃れました。
「あーっ!」
 ネズミたちの絶望の鳴き声。ガツガツという、キツネが獲物を骨ごと噛んで味わう音。
 ネズミはたまらず目をつむり、大きな耳を前足で覆いましたが、音は敏感すぎる聴覚を刺激し続けました。……しばらくすると、音がたくさんの羽音に変わりました。目を開けたネズミのまわりはおいしそうな羽虫で埋まっていました。
「へへへ。ありがとうよ。やせっぽちのネズミたちだったけど、とりあえずひとごこちついたぜ。お前も好きなだけ食いな」
「……もう、やだ。こんなことしたくない」
「傷ついたか。悪かったな。飢えるとついつい悪いことを考えちまう。今は俺も反省してるよ。お詫びと言っちゃなんだが、お前の家族とか友達を呼んで、その羽虫で宴会でもやれや」
 ネズミは二度とこの場所には来るまいと思いました。壁や地面に自分の罪がこびりついているように感じたからです。とりわけ、まだ虫を吐き続けている穴は、今キツネに食われた二匹のネズミの死が色濃く匂っているようでした。
 やっと家族の元に戻ったネズミは、彼らが思いのほか弱っていることに驚きました。彼が姉妹に産ませた子どもたちなどは、萎んだピンクの花びらのように身を横たえて息も絶え絶えの様子です。さっきまでは自分も同じように飢えていたのでこの恐ろしい状況に気づかなかったのでしょうか。ネズミは思わず自分の腹の出っ張りを見せて、
「お腹いっぱい食べさせてあげる。僕についてきて」と叫んでいました。何も知らない彼の家族は穴の近くにやってきて、存分に虫を食べました。そして、久しぶりに腹いっぱいの虫を食べた彼らは、その場でぐっすり寝込んでしまいました。穴の向こうから不気味な笑い声が聞こえてきました。
「くくく。どうだい。みんな喜んだろう。お前は家族を救ったヒーローだな」
「ちがう。僕は仲間を売ったひどい奴だ」
「いいじゃないか。あの二匹はお前を盾にするような奴らだった。どうせ無理やりここへ案内させたんだろう」
「……そうだけど」
「そんな奴ら食われて当然さ。どうだい。さっきの奴らのような悪いネズミをこの穴に誘い込んで退治するってのは。そっちの洞窟は平和で豊かになる。これ以上ない手段だと思うぜ。これこそ正義だよ。ネズミ君」
「その悪いネズミをあんたが片っ端から……その」
「ごちそうになります。えへへ。心配するなよ。俺の手に余るようなら、俺の家族を呼んで手伝わせるからよ」
「家族……いるんだね」
 ネズミにはこんな残酷なことをするキツネにも家族がいることが信じられませんでした。
「当たり前だろうが。俺だけじゃねえ。あのネコにだって、そのネコを食らう狼にだって家族はいるんだぜ。みんな家族のために必死なのさ。……どうもお前には、必死さが足りないみてえだな」
「そ、そんなことはない。僕だって必死だ。家族が飢えて死ぬのは堪えられない」
「そうだろ。それが生き物の普通の感情だよ。俺の提案の通りにすれば、お前の家族は誰も飢えずに済む。もちろん、俺の家族もね。八方丸く収まるじゃねか」
「あーっ!」ネズミは思わず叫んだ。
「びっくりした。……大丈夫か、ネズミ君」
「もうわからないよ。僕は、僕はどうしたらいいんだ」
「面倒くさい野郎だぜ。考え過ぎなんだよ。本能に従って動けばいいのさ。生き物はみんなそうしてる」
「ねえ、ひとつ聞いていいかい」
「なんだ」
「もし悪いネズミを全部そちらに送ってしまったら……その後はどうなる?」
「そりゃ……大丈夫さ。悪いネズミなんて山ほどいるだろ」
「でも、どこまでが悪いネズミなのかな」
「簡単じゃねえか。お前が悪いと思った奴が悪いネズミなのさ」
「僕が……それじゃまるで」
「そうだよ。お前はあの人間と同じってことさ。人間様が悪いって決めた動物は殺していいんだ。知ってるか。奴らは牛や豚、それに鶏にエサをやって育てるんだぜ。育ててどうすると思う。……食うんだと。なんだそれ、牛も豚も鶏も誰も殺したりしねえ」
「そんな無害な連中を食っちまうんだとよ。どうかしてるぜ。でもよ。奴らはそれができる。力があるからな。お前もそれを持てるってことだ。いい話じゃねえか」
「僕はそんな力はいらない。人間なんかにはならない」
「そうか、そうか。いいよ、もう。黙って家族が飢えて死んで行くのをみてりゃいいさ。でも、覚えておけよ。お前が少しだけ泥水を飲めば、家族は飢えずに幸せになれるんだ。自分が嫌な思いをしたくないからお前は家族をみすみす飢え死にさせる。そのことをくたばる前に思い出すんだぜ」
キツネはそれきり黙りました。でも、穴の向こう側でネズミの答えを待っているに違いありません。それはかすかに聞こえるキツネの息づかいから分かりました。ネズミは迷いました。ネズミは善いネズミでいたかったのです。でも、善いネズミであろうとすると、家族は飢えて死んでしまいます。家族を救おうとすれば、今度は善いネズミであることを捨てなければなりません。
「僕は、僕はいったいどうればいいんだ」
 ネズミは小さな頭を前足で何度も叩きました。その音は洞窟の中に響き渡りました。
 もちろんその音は穴の向こうのキツネの耳にも届きました。

                  おしまい

読んでいただきありがとうございました。感想をコメントとして書いていただけると嬉しいです。

↓ 本文と全く関係ありませんが、大好きなフランク・キャプラの映画です。心温まる映画に癒されたい方にお勧め。拙作『カリホルニアホテル』はこの映画へのオマージュです。


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